ご賛同・ご協力の呼びかけ

 最近の医学・医療の進歩発展は著しく、人類は新たな倫理的問題に直面しています。医学者・医師も自らの問題としてその解決を求められています。その取り組みに際しては、医学・医療のこれまでの歩みを真摯に振り返ることは不可欠です。特に日本の場合、日本の医学会・医師会がかつての戦争に加担したことや日本の医学者・医師が戦争中に、731部隊や戦地で行った「人体実験」「生体解剖」「生体手術練習」、九大捕虜解剖事件等の非人道的行為について、自ら真摯な検証を行い、その教訓を生かすことは欠かせません。
 しかし、当時の資料の焼却、散逸と残された資料の「未公開」「隠蔽」のために、その全貌は未だに明らかではなく、検証は容易ではありません。731部隊に関しては、当時日本を占領したGHQ(連合軍総司令部)は、関係した多くの医学者・医師に対する訊問をしましたが、研究成果を得るために戦争犯罪を不問とする取引をしました。
 このような経緯のなかで、日本の医学会・医師会では「真相は不明」「解決済み」あるいは「タブー」とされました。日本医師会は、1951年の世界医師会加盟にあたり、「日本の医師を代表する日本医師会は此の機会に、戦時中に敵国人に対して行った暴行を非難し、また行われたと主張され、そして23の場合には実際行われたという患者の虐待行為をとがむ」と声明し、問題は解決済みとしてきました。これは、日本の医学者・医師の戦争中の行為を真摯に反省し、その後目指すべき人種差別の根絶、人権擁護を基調とした日本の医学・医療のあり方を示したものとは、到底いえません。
 
「過去に目を閉ざすものは、結局のところ現在にも盲目となる」という歴史の教訓に学び、かつての戦争中における医学者・医師の非人道的行為等の史実を明らかにし、検証を進めることは、医学・医療の発展のために不可欠ではないでしょうか。その際、日本の医学界・医療界を代表する日本医学会、日本医師会や関わった学会・大学などが、自ら「戦争と医の倫理」の検証を進めることは欠かせません。
 
戦後60年以上が経過し、関係する生存者の証言や当時の資料収集も困難になる中で、検証を進めることが急がれます。史実に基づく客観的な検証のため、医学者・医師や看護師等の医療関係者だけでではなく各界の多数の方々の協力は欠かせません。
 戦争への加担の歴史を検証することは、国民の各層で行われるべきですが、医学者・医療人の姿勢が人命に直結するだけに、医学界・医療界が自ら真摯な検証を行い、それを国民に発信することが大切です。国民的な検証に向け、マスコミを含む国民への宣伝・広報活動も必要です。
 以上の趣意の活動を進めるために本会を設立します。
 何とぞ趣旨をご理解頂き、本会へのご賛同・ご協力を心からお願いいたします。

 2009年927


 
「戦争と医の倫理」の検証を進める会 設立大会